国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
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温泉に泊まりながらスイス・アルプス観光の旅 (2013/06)

初日の宿 <Swiss Holiday Park

 MorschachのSwiss Holiday Park温泉はスイスの玄関口チューリッヒ空港から90キロ程のところにあり、入国初日の宿として気に入っている。今回で4回目の訪問になった。スイス航空で成田を発てば、その日の午後4時前にチューリッヒに着くから、レンタカーの手続きを済ませて5時には空港を出ることができる。この時期ヨーロッパは夏時間だし、それでなくても緯度が高いので陽は長い。空港を出てすぐにアウトバーン(高速道路)に乗るが、市内の環状道路に当たる部分では通勤時間帯なので渋滞がある。しかし東京の渋滞を思えば大したことはなく、市内を回り込んで南下を始めると道は空いてくるし、美しい湖岸を走り前方にたっぷりと残雪が輝いた山が見えてきて「ああ、スイスに来たんだ!」と気分が高揚してくる。チューリッヒから南下しているA4というアウトバーンは由緒あるシュヴィーツ(Schwyz)という町の先で終わり湖岸の一般道になる。一般道に出てすぐ先を左(東)の高台に上ったところがモルシャッハという村で、そこによい温泉がある。
 6時過ぎにはホテルに着いた。一息入れたのち部屋で水着に着換え、備え付けのバスローブを羽織って向かいにある温泉館に行った。昔は道路を横断して行ったのだが今ではホテルから地下道が通じている。雲の多い日だったが露天プールからスイスらしい山々は見えた。そういう温泉があるのがスイスに何度も出かける理由の一つだ。同行の人達はサウナが好きだ。しばらく絶景露天を楽しんだ後、サウナへ行った。ここはドイツ語文化圏だから、サウナエリアは施設が充実しているし裸である。温度の低いミストサウナで体を慣らしたてから高温のドライサウナへと移った。おりしも80℃のサウナ部屋でアウフギュッスが始まろうとしていた。サウナシェフが高温の蒸気を立てて大型タオルで煽って熱波を入浴客に振りかけるサウナの儀式である。サウナ客は男女を問わずアウフギュッスを好むようで、その時間になると皆その部屋に集まってきてサウナの雛壇は裸の男女が肩を寄せ合うほどの満席になる。熱波の刺激はかなり強烈で、同行の二人にとっては初めての異文化体験にやや興奮ぎみだった。
 モルシャッハはウルナー湖岸の高台にある風光明媚な所だが、ウルナー湖は観光地として有名なルツェルンがあるフィヤーヴァルトステッター湖に繋がっている。従ってA4からA14へとアウトバーンを乗り継ぎ湖岸をぐるりと回って行くと40分ほどでルツェルンの街中に着く。ルツェルンでは最初に目についた駐車場に車を入れ、先ずは一番の観光スポットである古い屋根つき木造橋「カペㇽ橋」と「シュプロイヤー橋」を渡った。また文化人らしく「ローゼンガルト美術館」を観た。以前川向うにあったピカソ美術館はこちらに移ったようで、その他クレーや印象派の作品があった。とあるレストランでランチをした後もう一つのルツェルン観光スポットである「瀕死のライオン」を観に行った。フランス革命の際に傭兵として命を落としたスイス兵の追悼記念碑だそうだが、槍が刺さったライオンの悲壮な姿がよく表現されている。しかしそれだけのことなので観光バスが着く度に人がやってきててんでに写真を撮っては10分も居ないで引き上げる。隣に「氷河公園」というこの地の氷河の痕跡を見せる博物館を兼ねた施設があるが、そちらへ立ち寄る観光客は少ない。
 ルツェルンを後にしてアウトバーンA8でブリエンツ湖に向けて南下した。A8はインターラーケンを経てベルンへと通じているのであるが、ルツェルンから少し行ったところからブリエンツ湖までは未開通である。峠道があったりして運転は慎重になる。インターラーケンでアウトバーンを降り、いよいよベルナーオーバーラント観光の中心地グリンデルヴァルトへ向かって登る。

Grindelwald
のスパホテル<Belvedere>に3連泊

 
 グリンデルヴァルトはユンクフラウを盟主に戴くスイス中央部アルプス観光の主要拠点である。温泉好きとしてはちょっと敬遠していたのだが、いまではスパホテルがあるのでその一つ「ベルベデーレ」を拠点に選んで三連泊した。山の観光は天候次第である。今回の旅はアルプス観光が主テーマであるから、確実に山を観るためには連泊が必要だ。
 ところで「スパ」とはもともとベルギーの古い温泉地の地名だが、その盛名にあやかって各地で温泉を「スパ」と呼んだため、いまでは温泉を意味する世界語にまでなってしまった。因みに日本でも名湯「草津温泉」の英語表記は「Kusatsu Spa」である。しかしスパホテルを標榜するホテルのスパは温泉とは限らない。真水であっても温泉風の施設になっているホテルだというだけのこともある。
 グリンデルヴァルトは温泉地ではないから、スパホテルのスパは温泉ではない。しかしベルベデーレのスパには人工食塩泉の露天浴槽がある。名峰シュレックホルン(4078m)に続く白銀の尾根を望む絶景露天である。釦を押すとバブルが噴出する仕掛けもあって、温泉気分は満点。屋内には水泳プール、温水のジャグジー、さらにドライ、ミストなどのサウナがある。いわば温泉ホテルと変わりなかったので大いに満足だった。もちろんホテルはベルベデーレ(展望台)の名の通り、アイガー北壁を仰ぎ見る絶景ポイントに建っていて、満足感の大きな要素であることに間違いない。
 観光定番のユンクフラウヨッホに登った翌日は快晴で、周辺の山岳展望にグロスシャイデックとフィルストに登った。グロスシャイデックへは一般車は通れないので、グリンデルヴァルトの駅前からバスで行く。グロスシャイデックはグリンデルヴァルトの東の端にある標高1,962米の峠で、かって槇有恒が初登攀して有名になったアイガー(3,970m)の東山稜の鋭い岩のナイフエッジが正面に見え、その左に真っ白のメンヒ(4,099m)があって、丁度白と黒の双耳峰のように見えるという絶景ポイントである。
 一旦バスでグリンデルヴァルトに下りて、今度は長いゴンドラに乗ってフィルスト展望台(2,168m)に昇った。ここの展望は素晴らしい。左から右へヴェッターホルン(3,791m)、シュレックホルン(4,078m)、フィーシャーホルン(3,900m)、アイガーと高峰が並び、それにアイガーの右肩に半分隠れてユンクフラウ(4,158m)が見える。特にシュレックホルンは日本山岳界の草分け・辻村伊助が登り、その下りで遭難して大けがをしたことで、日本の山好きには気になる山である。また宮崎駿のアニメ「アルプスの少女ハイジ」によく出てくる山のモデルにもなっている。しかしその山がよく見える場所は少ないのである。早速展望デッキのテーブルに着きビールで乾杯した。

新興温泉<Ovronnaz Thermalp
>に2連泊

 旅に出て5日目の朝、グリンデルヴァルトを下りてマッターホルンを観にツェルマットに向かった。グリンデルヴァルトの水はアーレ川からライン河に出て北海に注ぐのであるが、ツェルマットの水はローヌ河に出て地中海に注ぐ。即ちグリンデルヴァルトとツェルマットの間には高い分水嶺が連なっている。九十九折の峠を越えて行くこともできるが、簡単に行こうとするとトンネルをカートレインで抜ける手がある。トンネルの手前の駅・カンデルシュテークで車に乗ったまま一列になって列車に乗り込むと、標高3700mクラスの山脈を約20キロの真っ暗いトンネルで一気に通り抜けることができる。昼過ぎにはツェルマットに着いてマッターホルンを観ることができた。
 定番の登山電車でゴルナーグラートに昇り、レストランに入ってランチにした。モンテローザやリスカムなどの高峰には雲がかかっていたが、マッターホルン(4,478m)は何とか見えたし、スイス国内では最高峰のドム(4,545m)を始めミシャベル山群はよく見えた。
 ツェルマットを下りてローヌ河沿いに西へ下って行った。ローヌ河はスイスアルプスに源を発し、レマン湖・ジュネーブを経てフランスに入り、プロヴァンス地方を潤しながら地中海へ注ぐ大河である。その源流地帯はスイスのヴァリス(フランス語圏ではヴァレー)州で、有名なマッターホルンや、レマン湖畔のシヨン城、近年世界遺産に登録され一躍脚光を浴びているワインの産地ラヴォー地区など、スイス観光の中心地域である。ヴァリスの谷には温泉好きの観光拠点になるいくつかの温泉がある。その中でロイカーバートは由緒とスイス最大の湧出量を誇る温泉地で、既に何度もマッターホルンやザースフェーの観光の拠点として訪れたことがある。そこで今回はモンブラン観光も考え、趣を変えて比較的新しい温泉「オヴロナ」を拠点に選んだ。
 ローヌ川は源流のローヌ氷河からほぼ西に100キロ程流れ、レマン湖に流れ込むためにマルティニーという町で直角に北に曲がる。そのマルティーニの少し上流の右岸の高い位置にオヴロナ村はある。急坂を二十数回のヘヤピンカーブで登ったところである。いわば河岸段丘にあたるアルプにあるのだが、段丘の規模は大きく段差は800米もある。ひと山登るほどの標高差だ。そういう場所に「パノラミック・アルパイン・スパ」を謳う「テルマルプ(Thermalp)」という温泉ホテルがあった。オヴロナは裏山に当たるグラン・ミュヴラン(3,051m)の登山基地として開発された所だというが、1990年に温泉を掘り当てて温泉センタ「テルマルプ」が誕生したのだそうだ。
 フロントで部屋の鍵、温泉の入場券それに温泉に行くときに着るバスローブとスリッパを受け取る。部屋は別館でありその別館の地下に駐車場もあった。部屋で水着に着換え、フロントで受け取ったバスローブを羽織って取り敢えず温泉に行く。部屋からはエレベータで昇り、長い渡り廊下を通って本館のエレベータで更に2階昇るとフロント、レストランそれに温泉の入場ゲートのあるフロアに到着する。
 温泉は露天の展望が素晴らしい。北側には鋸の歯のように岩峰が並んでいる。南側は谷を隔てた対岸に白銀の三千米級山脈が連なっている。湯温は36℃くらいでややぬるめだが、ヨーロッパの温泉では普通である。常に噴流が出ているスポットもあって背中に当てながら思いっきりスイスの展望温泉を楽しむことができた。この辺りはフランス語圏であるから温泉文化もフランス流で、サウナはあるが重視されていない。5人も入れば満員になる小さなドライとミストサウナが一部屋づつあるだけである。従って予約制になっていて人数を制限している。サウナは裸でも水着着用どちらも可ということだが、ドイツ語圏とは異なりみんな水着を着たままである。
 今回の旅でオヴロナ温泉に泊まることにしたのは、モンブラン観光に行くためである。モンブラン観光の拠点であるシャモニーは、マルティーニから南に峠を越えれば近い。シャモニーはフランスでしかもモンブランはフランスとイタリア国境にありスイスには接してない。しかし日本のスイスツアーには必ずシャモニー経由のモンブラン観光が入る。それに倣って今回我々もスイス・アルプス観光ツアーのメニューにモンブランを入れたのである。
 思った通りオヴロナからシャモニーまでは近く、1時間半ほどで着いた。街中で見付けた駐車場に車を入れて、ゴンドラの乗り場まで10分ほど歩いた。この日はやや雲の多い日だったが、見上げるとモンブランの山頂に続く白銀の尾根は晴れていそうに見えたので迷わずゴンドラの切符を買いゴンドラを二つ乗り継いでエギーユ・ドゥ・ミディ展望台に昇った。さらにエレヴェータでピトンという尖塔の展望台に昇る。このエレヴェータには刻々と標高が表示されていて、昇る途中で富士山の高さを超えるので日本人は一様にそこで感動する。生憎お目当てのモンブランの頂きには雲が懸っていたが、頂に至たる山稜は間近に望め、空気は寒くてアルプスの雰囲気は充分であった。
 シャモニーに下り、モンブランの初登頂をしたソシュールの銅像をカメラに収めてから往路を引き返してホテルに戻った。この日はゆっくりと温泉に浸かることができた。

由緒ある温泉地Yverdons-les-Bains 
<Grand Hotel des Bains

オブロナを下りてレマン湖畔に向かった。先ずはシヨン城を観に行った。シヨン城には昨年も行ったので、初めての方々にはゆっくりと回ってもらったが、こちらは湖越しに聳える名峰ダンデュミディの雄姿を眺めていた。シヨン城から湖岸を走りモントルーを経てヴェヴェーに行ってランチをした。ヴェヴェーは晩年のチャップリンが住んだということで有名で、湖岸に彼独特な姿の銅像が建っている。そこで記念写真を撮った。
モントルーからローザンヌに至る葡萄畑が広がる湖岸の斜面は、2007年に「ラヴォー地区の葡萄畑」として世界文化遺産に登録された。以来日本からのスイス観光ツアーには必ず「ラヴォー地区のドライブ」が入るようになった。そういうこともあってヴェヴェーから斜面を登って葡萄畑の中の道をローザンヌへ向かった。レマン湖を眼下に望む風景は自然遺産であってもおかしくはない絶景である。
ローザンヌから高速道路に乗って北上し、ニューシャテル湖の湖尻に当たるイヴェルドンに向かった。イヴェルドン(Yverdons-les-Bains)は古代ローマ時代から名の知れた温泉だったようで、今でも人気の温泉センター(Centre Thermal)がある。チェックインしたのはその温泉センターに直結したホテル(Grand Hotel des Bains)である。チェックインすると部屋の鍵と共に温泉センターへの入場カードキーを渡してくれる。早速水着に着かえて長い渡り廊下を通って温泉に行った。
日曜日だったからか温泉センターは賑わっていた。大きな露天の温泉プールが2つある。サウナは2階にあり、そこには屋内・露天と二つのホットタブがあった。しかも屋内のタブは40℃で「日本風呂(Bain japonais)」と名付けられていたことは評価できる。ただしこの辺りはフランス語圏なので、サウナエリアと言えども水着着用である。温泉センターとは別に、ホテルには宿泊客専用の温泉がある。しかしセンターで楽しんだ後ではあまり魅力はない。
日曜日というのは日帰り温泉客は多いのだが、ホテルは閑散としていてホテルの主食堂はクローズである。バーでしかも限られたメニューで食事ができるというので夕食はそこで摂った。客が他に居なかったためか、ウエイターやウエイトレスのサービスがひときわ良かったように感じた。

帰国前夜の温泉
Reinfelden Parkhotel am Rhein

スイスへの入出国をチューリッヒ空港にしたので、帰国便に搭乗する前日には空港から100キロ圏内の温泉に泊まることにしている。今回はバーゼルの近くのラインフェルデン温泉を選んだ。前泊のイヴェルドン温泉からアウトバーンに乗りバーゼルに向けて北上するが、途中スイスの首都で世界遺産でもあるベルンを経由する。これまでスイスには馴染が薄かった連れのお二人のために、この日はベルン観光をする計画である。
アウトバーンを降りて市街地をベルン観光の中心部まで行って地下駐車場に車を駐めた。先ず駐車場から近い大聖堂へ行った。この大聖堂はファサードの上部に飾られた凝ったレリーフと、スイスで最も高いという100米の尖塔が有名である。尖塔の344段の螺旋階段を登ったお二人は、快晴で「ユンクフラウなどの山々が見えた」とお喜びの反面、「もう登らない」との反省も。丁度昼が近づいていたので有名な時計台に行き、傍で買ったアイスを食べながら時計の仕掛けが始まるのを待った。仕掛けは大げさなものではないが800年の歴史がある時計台だというのが驚きである。更に「パイプ吹きの噴水」や「子喰い鬼の噴水」など有名な噴水の前では記念写真を撮った。
 メインストリートの時計台より西側は全面道路工事中で目隠しがしてあり、アーケードを歩きながら向かい側を見ることはできない。面白くないのでとあるレストランでランチをした。駐車場へ戻る途中で「アインシュタインの家」に寄った。アインシュタインはこの家で相対性理論など有名な論文を書いたのだそうだ。時計台がヒントになったという話も聞いたが何がヒントだったのか天才のことなど分かるはずもない。
 再度アウトバーンに乗って北上し、今回の旅の最後の宿泊地ラインフェルデンに行った。ラインフェルデンはライン河に面した街で、バーゼルの少し上流に位置する。12世紀に出来た古い街で、19世紀には食塩泉が発見され近年になって温泉センターができたのだそうだ。チェックインしたホテル(Park-Hotel am Rhein)からは地下通路を通って温泉センター「ゾーラ ウーノ(Sole Uno)」に直結している。
 例によって早速部屋で水着に着かえ、バスローブを羽織って温泉に行った。温泉にはバスタオルが用意されていて、部屋から持ち出す必要はなかった。屋内外に大きな温泉プールがあり、湯は透明だが舐めてみると結構しょっぱい温泉らしい温泉である。サウナエリアには広くて雰囲気の好いサウナガーデンがあった。ラインフェルデンは川を渡れば対岸はドイツである。すなわち完全なドイツ語圏だからサウナは裸である。芝生の上に並べられたデッキチェアは裸で日光浴の男女で占領されており、割り込む隙はなかった。
 夕食には滔々と流れるライン河に張り出したテラスのテーブルに着いた。メインテーマにアルプス観光を掲げた今回の旅は、雲で山が隠れた日もあったが、ルツェルン、ベルンなどの古都やレマン湖畔という観光地も訪ねたし、スイス観光としてはそれなりの楽しい旅であったと思う。最後の晩餐は楽しかった旅を振り返りながら先ずビールで乾杯した。ライン河で獲れたという鱒が美味しかった。

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