広い関東平野をゆったりと流れる大河・利根川は、上州・前橋辺りから上流は山間を流れるようになる。それを北に向かって遡って行くと谷川岳に突き当たり、川は東に曲がって奥利根と呼ばれる源流地帯になる。川の屈曲点の少し手前の川沿いに水上温泉はある。今では奥利根一帯に点在する温泉を纏めて水上温泉郷と呼んでいるが、由緒も賑わいも水上温泉はそれらの盟主である。
付近には縄文時代の住居址があるそうである。寒冷地では温泉が湧出するところは住み易いところのはずである。だからこの地には古代から温泉が湧いていたに違いないのだが、温泉として認知されたいわゆる開湯は室町時代(16世紀)だという。若山牧水の「みなかみ紀行」が有名にしたのだとも言われているが、実は牧水は水上温泉には行っていないらしい。彼の「みなかみ」は川の源流地域という意味で、利根川の支流の吾妻川、赤谷川、それに片品川源流地域を指しているようである。
温泉の湧出地は「湯の原」というところだったようで、当時の上越南線が北へ延びて(1928年)終点が水上駅になったことから水上温泉と呼ばれるようになったのだろう。その後清水トンネルの開通で増々交通の便がよくなり、草津、伊香保に並ぶ上州三大温泉の一つになった。とまぁ、これが水上温泉の沿革らしい。
それはともかく「水上館」へは現役時代、会社の研修会などで数回泊まったことがある。利根川の左岸に建つ大人数で泊まることもできる大型のホテルである。大型だけに部屋から温泉浴室までが遠かった。特に利根川の清流を見下ろすことのできる絶景半露天は、川に沿って細長いホテルの南の端にあったが、そこに至る経路の複雑さは全く気にならない素晴らしいものだった。