国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
Home > TOP > _


  北アルプスを廻る温泉プチ旅
    安曇野・亀谷・平湯・白骨>

あづみ野CCの温泉


 あづみ野CCでは毎年何回かゴルフをする。その訳は、あづみ野CCのクラブハウスには名湯・中房温泉から引湯した良い温泉があるからである。7月に行ったのだが雨でプレーできなかった。従って9月に天候を見定めてから出かけた。早朝に横浜の自宅を出て、甲府の先の双葉SAで朝食を摂り、9時過ぎにはゴルフ場へ着いた。最近は滅多にゴルフをしないのでスコアはメタメタだったが、温泉目当なのだから気にしない。
 浴場には大浴槽の他に総ガラス張りの露天風岩風呂がある。少量だが中房温泉から引湯した源泉が掛け流されていて飲泉も可能である。中房の湯はそれで珈琲を入れてもご飯を炊いても美味しいアルカリ性のお湯である。ゴルフの疲れもたちどころにとれる。
 温泉の後は大町のスーパーで食材を仕入れてから青木湖畔の山小屋に泊まった。
 
 参照


亀谷温泉<白樺ハイツ>

  立山の南に薬師岳(2926m)という立派な高山があるが、その麓に巨大ダムによって形成された有峰湖がある。その昔(1958年ころだったと思う)ダム工事が始まったばかりの頃、薬師岳に登ろうとして有峰に行ったことがある。有峰は秘境中の秘境で4軒あったという民家も廃屋になっているということだった。最寄りの駅は高山本線の猪谷で、そこから東へ約30キロの山道をいくつかの峠を越えて歩いて行かねばならなかった。幸いその時はダム工事が始まっていたおかげで猪谷から資材を運ぶトラックに便乗することができ、更に工事現場では20トンダンプの平らなボンネットに乗せてもらえて楽に有峰に辿り着くことができた。廃屋の跡を感慨深く横目で見ながら山へと向かったという記憶がある。
 その後有峰ダムは完成し、富山方面からダムに通じる道路もできて薬師岳への登山も便利になったという。しかし山から遠ざかっていたこともあり行く機会がなかったが、「有峰」という名前は常に思い出の中に有った。今回安曇野でゴルフをした機会に思いついて有峰湖を観に行ってみた。前泊した信州・青木湖畔の山小屋から糸魚川へ出て北陸道へ乗った。有峰湖へ行くには有峰林道という有料道路を通る。立山ICで降りて南下し、そのゲートのある亀谷(かめがい)に向かった。ゲートのすぐ手前に「亀谷温泉・白樺ハイツ」という国民宿舎があった。温泉と聞くと立ち寄らねばならない。
 亀谷温泉は1975年、ダムの工事中に泉源が発見されたものを下流に引いてきたのだそうだ。アルカリ性(pH9.7)で透明な単純硫黄泉で少々加熱している。ガラス張りの展望大浴場の外に、露天と称する石組の浴槽があった。露天と言いながら屋根があり網戸で囲われている。風は通るがことさら解放感を感じる露天ではない。
 有峰ダムはダムの高さが140米もある巨大ダムで、同じ富山県にある黒部ダムより貯水量は大きいという。北陸電力の5つの水力発電所に水を供給しているのだそうだ。今は緑に囲まれた有峰湖だったが、紅葉時期は薬師岳に雪も降り美しい風景が想像できる。しかしながら観光を意識した施設などは全くない意外とそっけないダムだった。湖岸の林道を南の端まで走って、神岡に抜けた。

平湯温泉<平湯館>

 ステロイドの離脱症状で手足が動かなかったことがある。一年位不自由な状態が続いた。腕が上がらず電車の吊革が持てなかったり、膝が痛くて寝たら起き上がるのに苦労をした。家ではベッドに寝ていたからまだよかったものの、温泉旅館ではトイレに行くのに布団から立ち上がるのがつらかった。以来温泉に泊まるときは出来るだけベッドルームを選ぶようにしている。最近になって温泉検索サイトで「ベッドルームの宿」というカテゴリーを見つけた。「これこれ!」と探して見つけたのが平湯温泉・平湯館である。平湯は奥飛騨温泉郷の元祖ともいえる由緒ある温泉地で、豊富な湯量を誇り古くから露天風呂を設えた宿が多いことでも知られている。露天風呂を評価基準の一つと考えている温泉好きにとって、良い宿が見つかったと喜んだ。
 山小屋から平湯へは北回りで有峰湖を経由して行った。有峰には観光ポイントらしきものはなかったが、林道ドライブコースとしては結構面白かった。林道を南の端まで走って神岡へ下った。神岡から国道471号を高原川に沿って上流に向かえば程なく平湯に着く。
 平湯館では若いにっこり女将に迎えられた。大女将は引退して女将職はお嫁さんに任せたのだそうだ。客としては歓迎すべきことだ。ツインベッドの部屋はコンパクトなものだったが、温泉目当てに来たのだから問題はない。早速浴衣に着かえてフロントから続く廊下の先にある温泉に行った。
 「杣人の湯」という檜造りの内湯から「山伏の湯」という大露天風呂に出る。巨岩を配した大露天風呂は内湯を囲んでL字形に造られていて、五つの懸樋から大量の湯が掛け流されている。結構深い湯舟だが、お湯の温度はやや低めに設定されているのでゆっくり首まで浸かることができる。実はこの宿には昔一度来たことがある。もう三十年位は経つだろうか。記憶では露天に桜の花が咲いていたりして、その脇に風情のある大きな傘があった。その傘が今は無い。全体の雰囲気はあまり変わってないのだが、ちょっと寂しい。尋ねてみると、豪雪で傘が壊れ再建しようにも匠が居ないのだそうだ。仕方ないのだろう。食後に浸かった時には南の空の雲間に三日月が懸っていた。
 朝は浴室が男女入れ替わっていて「木響の湯」に入った。内湯は「杣人の湯」と大差はないが、外は檜造りの屋根つき露天と、さらに庭に出たところに小さいが雰囲気の好い露天岩風呂があった。


 参照

白骨温泉 <公共野天風呂>

 平湯から国道158の旧道、即ち安房峠を越えた。久々にスーパー林道を通って白骨温泉に行こうとしたのだが、林道は工事中で通行止めになっていてがっかりした。国道でそのまま沢渡まで下りてから白骨へ登って行った。白骨温泉は600年以上の歴史があり、元禄時代にはすでに湯治宿が並んでいたという。大正時代からは中里介山の「大菩薩峠」で世に知られ、近年になっては入浴剤の混入で世の顰蹙を買った。特に入浴剤混入の問題は温泉好きにとっては許しがたい暴挙だった。だからしばらく敬遠していたのだが、もう落ち着いただろうと思って今回寄ってみたのである。
 問題の発端になった温泉は、立ち寄りで人気の高い「公共野天風呂」である。乗鞍岳の山腹から梓川へ流れ込む支流・湯川の谷底にある。駐車場から急斜面にジグザグに造られた階段を川に向かって下って行く。野天風呂は狭い河岸段丘に綺麗に仕上げられた石組の湯舟である。立ち上がれば湯川の流れが見える。湯川は細い川だが水量は結構多い。それが温泉のすぐ下流で岩に吸い込まれていく。そこは「白骨隧通し」という奇勝である。湯川の水流が石灰岩を穿ってできた天然橋だ。しかもその橋の上は白骨の温泉街に入って行く立派な舗装道路が通っている。天然橋は日本では広島県・帝釈峡の「雄橋」が有名であるが、自動車道路が通じている天然橋は他にはアメリカに二つあるだけという世界的に珍しいものだそうだ。そういう天下の名勝を眺めながらの温泉は文字通り名湯である。
 白骨からはスーパー林道で乗鞍高原まで行ってから山を下りた。国道158を松本方面に向かったが、西瓜の名産地で有名な波田で右折して山形村の蕎麦集落・唐沢で手打ちそばを食した。唐沢は蕎麦処として売り出して40年位になると思うが、いまだに素朴さを失っていないのがよい。
 食後、最寄りの塩尻北ICから高速に乗って横浜の自宅に帰った。

<< 戻る >>

*