国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
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第73回 信泉会 2012/fall

     亜信州<燕温泉>の秋色を訪ねて

亜信州<燕温泉>へ




 信泉会(信州の温泉・自然・文化を訪ねる会)は1975年から続いている旅の会で、年二回の例会では温泉も食事もことさら信州に拘ってきた。宿泊はできるだけ会として新しい温泉を求めてきたのだが、回を重ねると好ましい温泉は行き尽し、探すのに頭を悩ませる状況になってきた。そこで誰からともなく提案されたのが、亜信州と言える限度で信州の周辺にまで範囲を広げようということである。信州出身の新会長から取り立てた反対もなかったので、昨秋の71回例会には安房トンネルを抜けて飛騨へ出た。中尾温泉に泊まり新穂高のロープウエーの紅葉や展望が素晴らしかった。それに味を占めて、今回の73回例会は越後に越境して燕温泉にしたのである。周辺の紅葉は抜群だったし、宿のもてなしも素晴らしかったので大いに満足のいく旅だった。
<河童の湯>に集合

 例会に出席する会員は何台かの車に分乗して集まる。このところ集合場所は立ち寄り温泉にしている。都心から抜け出すときの渋滞で、集合時間を厳格には出来ないからである。温泉だと遅れて来る車をお湯に浸かってのんびりと待つことができる。今回集合場所を中野市の「間山温泉・ぽんぽこの湯」にしていたが、直前になってネットで調べて「休館中」であることが分かった。慌てて集合場所を茅野市の「河童の湯」に変更したのである。
 毎年10月の最終土日を秋の例会と決めているが、今年は秋が遅く月末が紅葉の盛りのようで、紅葉狩りと思える車がことのほか多かった。10時集合にしていたのだが、3台の車のうち時間通りに着いたのは一台のみというありさま。「河童の湯」は会では以前にも集合場所として使ったことがあったが、今回行ってみると庭園風呂だった露天はすっかり今風に趣を変えていた。その代り39℃と湯温が低めに設定されていて、後続車の仲間を待つのには具合がよかった。
 昼が近かったので白樺湖へ登る途中の大門街道脇の蕎麦屋「もえぎの家」で会定例の蕎麦ランチをした。蕎麦は通ぶって「もり」を注文することになっているが、メンバーも年々齢を取り「大盛り」の注文が減ってきた。
 大門峠を越え、そのまま上田に出て「上田菅平IC」から高速に乗った。当初「間山温泉」で集合するつもりで近くの「中山晋平記念館」にも寄ることにしていたが、集合場所を変えたので割愛し、「豊田飯山IC」で降りて「高野辰之記念館」に直行した。高野辰之の「故郷」は昨年の大地震以来国民的愛唱歌として復活した。多くの人が家族や友垣のことを想い心を和ませた。記念館は唱歌「故郷」「朧月夜」「紅葉」などのふるさとにある。「うさぎ追いしかの山」や「小鮒釣りしかの川」がある。「蛙の鳴く音も鐘の音も」の鐘楼もある。会の趣旨の一つである信州の文化に触れることができた。

燕温泉


 妙高高原ICで高速を降りて赤倉温泉から関温泉へ向かった。途中大田切川に懸る不動滝辺りの紅葉の色づきが素晴らしく良くなっていた。関温泉からトンネルを抜け、九十九折の坂を登って燕温泉・岩戸屋に着いた。岩戸屋は会員のうちの数名はスキーなどで何度も泊まっている宿だが、信泉会としては初めてである。通された窓から観る大田切川上流部の紅葉は筆舌に尽くしがたいほどに美しかった。今年は秋が遅れて丁度良かったとのことだ。
 燕温泉には露天の外湯が二つある。いずれも人気の露天で、大勢の温泉ファンが立ち寄りで集まっている。明るいうちにと早速着替えて先ずは昔スキー場だったところにある「黄金の湯」に登って行った。辺りの秋色に囲まれながら正面に妙高山のピラミッドを仰ぐ位置に、造りの良いワイルドな露天がある。掛け流されているお湯は熱いのだが、外気が10℃前後になっているこの時季、湯船の中はぬるい。浸かったらなかなか立ち上がれない。「ここは以前混浴だったんだよ」などと昔話をしながら長湯をした。秋の日は暮れてきて、帰りは月を見上げながら宿へと山を下った。
 翌朝は風が吹き小雨がぱらついたりしていたが、燕温泉の人気スポットであるもう一つの露天「河原の湯」へ行った。深い渓谷沿いに美しい紅葉を愛でながら杣道を10分ほど歩いたところに妙仙橋という立派な吊り橋がある。橋を渡って川底に降りた先に河原の湯がある。土砂崩れで一時閉鎖されていたが、多くのファンが嘆願して昨夏リニューアルされたという。なるほど雨模様の早朝にもかかわらず数人の先客がいたし、また後からもやってきた。それだけ秘湯の雰囲気抜群のワイルドな混浴露天である。同行した女性会員は大勢の入浴客に気後れして足湯だけで先に帰っていったが、後で残念がっていた。

いいやま滝湯温泉

 燕を発って妙高高原の絶景ポイント「いもり池」に寄ってみた。雨は降っていなかったが妙高山頂は雲に隠れていて、せっかくの絶景も点睛を欠いた。帰路は高速で豊田飯山ICまで戻って、信泉会としては久々に千曲川沿いの国道117号を下った。関越道から帰る計画である。国道は飯山辺りでは千曲川の左岸を走っているが、それが橋で右岸に渡った少し先に「いいやま滝湯温泉」があった。走っていると対岸に「ゆ」の字を掲げた建物が見えた。細い橋を再び左岸に渡ったところで、飯山線・上境駅の近くである。
 江戸時代には湯治場があったといい、一旦廃れていたのを20年ほど前に再開発したのだという。弱アルカリ性の透明のお湯である。滝湯と名付けられているだけあって、お湯が滝のように流れている大きな露天があった。露天の端に立ち上がれば豊かな水を湛える千曲川の流れも望むことができるが、それをやるとちょっと寒かった。
 新潟県に入り千曲川は信濃川と名前を変える。津南町のスタンドで尋ねて、国道沿いにあるお勧めの蕎麦屋「とみざわ」で会恒例の蕎麦ランチをした。「小澤征爾」の色紙が貼ってあったりする有名店のようで、混みあっていたが確かに蕎麦は美味しかった。
 国道117を右折し、国道253の十二峠のトンネルを抜けて塩沢石打ICから関越道に乗って一路帰宅の途についた。長い関越トンネルを抜けると雨だった。それでも燕温泉では「岩戸屋」で歓待を受けたし紅葉も素晴らしかったので文句はない。

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