国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
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温泉に泊まりながらスイス・フランス・イタリアの古城を巡る (2012)

                   その5            アオスタ谷の古城巡り

古城巡り


 イタリア北西の端、フランスとスイスとの国境に接する地域にヴァッレ・ダオスタ(アオスタ谷)という小さな州がある。モンテ・ビアンコ(モンブラン)から流れ出し、トリノの東でポー川に合流してアドリア海に注ぐドーラ・バレテア川が形成する深い谷である。今では秘境といってよい過疎の谷だが、昔は地中海とヨーロッパ大陸を結ぶ交通の要所だったらしい。数多くの古城が残されておりかっての繁栄ぶりがうかがえる。
アオスタ谷の最奥の町がクールマイヨールで、その手前の小さな村が今回我々が二連泊したプレ・サン・ディディエである。プレ・サン・ディディエには良い温泉がある。だから山と城を観る拠点に選んだ。けれども残念なことに温泉はメンテナンスで休業していた。クールマイヨールからのロープウエーも運休だった。しかしシャモニーに戻って山も観てきた。次は城巡りをしなければならない。
シャモニーでランチをしてから再びトンネルを抜けてアオスタ谷に戻って来た。最初にドーラ・バレテア川右岸段丘の上にあるアントロ城へ行った。小ぢんまりした城で、中央に起立している塔の上部に足場が組んであった。修理中らしく中に入れないので古城評論家先生は機嫌が悪い。
次に訪ねたのが少し下流に行って左岸の高台にある大きな岩塊の上に聳えるサン・ピエール城である。主塔の上部四隅に尖がり屋根の小塔が立ち並ぶという格好の良い城だ。背景に雪を戴く山が見えるのも風景としてはなかなか良い。しかし大きなクレーンが立っていたからここも修理中らしい。先生が城に登ろうとして作業員に制止された。機嫌がさらに悪くなった。
高台から下りる途中で別の城の標識(フュルケ城)を見つけて寄ってみた。小さな城でそれらしい石垣はわずかに残っていたが、館はプライベートな住居になっていた。先生はここでもがっかりする。
 次はサン・ピエール城の真下と言ってよい河岸段丘の端に建つサーリオ城だ。これはなかなか見栄えのする立派な城である。回り込んだところに門があり料金を取って内部の見学できるようになっている。ただし65歳以上のシニアは無料で、しかもガイドが英語で城内を案内してくれた。無料だったことに加えガイドが美人だったので先生の機嫌はいっぺんに治った。
 サーリオ城で時間をかけたのでこの日は打ち止めにしてホテルに戻った。

古城巡り つづき

 アオスタ谷にはプレ・サン・ディディエの他にもう一つ温泉がある。アオスタ谷を流れるドーラ・バレテア川は上流域の約70キロは直線的に東へ流れ、そこで急角度に南へ曲がる。その屈曲点に位置するのがサン・ヴァンサンという温泉町である。プレ・サン・ディディエで2連泊した後さらにお城を観ようと下流へと下った。
 最初はプレ・サン・ディディエから50キロほど下った右岸にあるフェーニス城である。思いのほか堂々たる城で、城好きは大喜び。ここもシニアは無料でガイドが付く。小学生が大勢見学に来ていた。地域の歴史を学んでいるのだろう。
 次に向かったのが更に10キロほど下流のウッセル城。岩山の上に異様な直方体の城が聳えていた。息を切らして城まで登ってみたが入り口は固く閉ざされて中へは入れない。古城評論家先生は諦めきれず城の周りを恨めしそうに歩き回っていた。お付の者たちは眼下に流れる川を隔てたサン・ヴァンサンの町を見渡していた。
 二つのお城を観たところで、山は雲に覆われていたが、ひょっとすると高いところは晴れているのかも知れないと、モンテ・セルヴィーノ(マッターホルン)を観に行こうということになったウッセル城から北へ谷筋を登れば30キロ足らずでモンテ・セルヴィーノの麓の町セルヴィニアに行ける。
 セルヴィニアは霧に包まれ閑散としていた。モンテ・セルヴィーノの肩まで昇るロープウエーの乗り場はすぐに分かったが、やはりここでも運休中である。山の上は晴れているという期待を検証するすべは閉ざされた。昨夜の夕食時に間違えて余分に注文したピザをテークアウトして持ってきていた。外は寒いので車の中でランチにした。デザートは街で営業中のレストランを見つけカフェを喫した。イタリアではカフェと注文するとデミタスのエスプレッソが出てくる。レギュラーカップの珈琲を望む場合はアメリカンとかカプチーノと言わねばならない。
 山の上に行けなかったのでセルヴィニアを引き揚げ少し下流のもう一つのお城を訪ねた。
フェーレス城といいドーラ・バレテア川左岸の高台に直方体に見える館が聳えている。駐車場から急坂を上らねばならない。ここでもシニアは無料で普通パスポートなどの提示を要するらしいが、息を切らせて辿り着くとフリーパスだった。庭に入った所においしい湧水があった。

サン・ヴァンサン温泉

 イタリアは温泉の多い国なのだがヴァッレダオスタ州には二つしかない。その一つがプレサンディディエでもう一つがサン・ヴァンサンである。プレサンディディエの温泉が休館中だったので、期待してサン・ヴァンサンに行った。予約していたホテルが見つけられずに困っていたが、道を尋ねた人が親切で自分の車で先導してくれた。街の中心部で道路に円柱が二本立っていて車が入れない。専用電話でホテルに連絡すると円柱が引っ込む仕組みだ。
 ホテルで温泉に行きたいと道を尋ねると、温泉館が全面改装中で一年前から休業中とのこと。事前にネットで温泉のホームページは見ていたのだが、イタリア語だったので休館情報を見逃していたのに違いない。今回の旅のテーマの一つ、温泉に関しては全くついていない。夕食前に街をぶらついていたら教会の向こうの高台に[ TERME ]の看板を掲げた半円形の温泉館が見えた。それを見るとまた残念な気持ちが強くなる。
 このサン・ヴァンサンではホテルや街のレストランが、いずれも夕方は7時半からしか開かない。温泉が駄目なので早めに夕食を思ったがかなわなかった。観光客などはあまり来ないところかもしれない。

アオスタ最後のお城

 今回の旅も10日目になる。スイスに入り、フランス、イタリアと回ってきてこの日はスイスに戻る日である。サン・ヴァンサンのホテルを発って、先ずはアオスタ谷の最後の城に寄った。トリノの方面から北に向かってアオスタ谷の入口に当たるところにある大きな城がバール砦である。ドーラ・バレテア川左岸に突き出した岩山の上にある。三階建ての駐車場の上からケーブルカーを3回乗り継ぎ、更にエレベータで昇った所に入城のフロントがある。幸い母親が日本人だから日本語が話せるというスタッフがいた。
 この砦は美術館や博物館として活用されているようで。丁度「アルプス登山の歴史」と「リヒテンシュタイン大公所蔵の絵画展」が開催されていた。道理で大勢の人が集まっていたのだ。シニアには割引があるということでその両方を鑑賞することにした。アルプスの方は古い登山や岩登り用具の他はイタリア語の説明だからよくわからなかった。マッターホルン初登頂の映画もやっていた。絵画はルーベンス・レンブラント・クラナッハといった巨匠の作品が沢山あってこれは見れば分かって良かった。
 このような訳で砦の内部はすっかり改装されていて、立派な城なのに古城評論家先生はやや不満のようだった。山の下の駐車場まで、ケーブルカーを使わずに周りを観察しながら歩いて下った。後は高速に乗りスイスに戻るべくロカルノに向かった。

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