国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
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温泉に泊まりながらスイス・フランス・イタリアの古城を巡る

  その6  スイスへ戻って世界遺産のお城

ロカルノの温泉 <リド>


 イタリアの北西端にあるヴァッレ・ダオスタ州で8つの古城を巡った後、東に振ってスイス・ロカルノへ行った。ロカルノはスイスの最南端に近いマッジョーレ湖畔にあってイタリア語圏である。人口は1万5千ほどの小さな町なのだが、スイスでは最も標高の低いリゾート地で、国際映画祭の開催地などで知られている。近くに世界遺産の古城群があり、街には温泉があるというのでイタリアからチューリッヒ空港へ戻るにあたっての中継地に選んだ。
 イタリア・アオスタ州の最後のお城・バール砦の近くからアウト・ストラーダ(高速道路)に乗り、4つのジャンクションを経て国境のマッジョーレ湖に行くのである。その3つ目のジャンクションが工事中で分岐が良くわからず通り過ぎてしまった。次のICで降りて迷いながらまた高速に戻ったりした。ヴェルバーニアという町で高速を降り、マッジョーレ湖の西岸を北上する。ロカルノの手前に国境がありイタリア側、少し離れてスイス側のゲートがある。ゲートがあるのはスイスがユーロに加盟していないからなのだが、いずれのゲートもフリーパスである。
 ロカルノには湖岸に「リド」という温泉館がある。厳密にいうと法律で定められた温泉ではないようだが、湯けむりをあげた露天温水プールがある。噴流・打たせ・ぶくぶくなども設えられ、一般的なヨーロッパの温泉プールと変わりはない。すなわち温泉と区別はつかないし、湖に面していて雰囲気は素晴らしいので、勝手ながら温泉と認定したのである。その温泉に近いホテルを予約していたので、チェックインの後さっそくぶらぶら歩いてリドへ行って湯に浸かった。

世界遺産・ベリンツォーナ古城群

 ロカルノの東隣にベリンツォーナという古い街がある。そこにアルプスに残る中世の要害として世界遺産に登録されている三つの古城がある。スイスにはドイツやイタリアに比べて世界遺産は少なく、わずか10あまりしかないのだが、その中に入っているということはかなり重要な城だったに違いない。行ってみてなるほどと頷けるものだった。
 街の中にエアーズロックを小型にしたような大きな岩山がある。その上にカステルグランデ城が建っている。現在は歴史博物館やレストランになっている。岩山の麓に駐車場がありそこからエレベータで城に昇るようになっているらしいが、それが分からず昔からの細い石畳の道を登ったので、古城の雰囲気をたっぷりと味わうことができた。
 カステルグランデ城から山を見上げると、更に二つの城が上に構えているのが見える。手前のがモンテベッロ城である。これもかなり大きな構えの城で本丸に達するまでに二つの跳ね橋がある。ワインを造るために葡萄を絞る機械も置かれている。周りに葡萄畑が広がっているからこの城でもワインを醸造していたのだろう。城の中は入館料をとる博物館になっているが、城壁の上を歩いたり外周りを検分しただけでお城先生も満足のようだった。
 ベリンツォーナの三古城のうち最上部にあるのがサッソ・ゴㇽバロ城である。高い位置だからベリンツォーナの街を睥睨できる。立方体を二つ並べたようなシンプルな構造に見える城である。お城先生も外をぐるりと回っただけで駐車場へ戻って来た。

最後の温泉へ

 ベリンツォーナはアルプスの南側だから、チューリッヒ空港へ戻ろうとすると2000米級の峠越えになる。サン・ゴッタルド峠を越えてアンデルマットに出るか、またはサン・ベルナルディーノ峠越えでクールに出るという二つのルートがある。旅の最後はちゃんと温泉に泊まりたいと思い、後者のルートを選んだ。
 地図で見ると高速道路が続いているように見えるが、片道一車線・対面交通の道で、峠へ向かうヘヤピンカーブの登りはトンネルの入り口まで渋滞した。トラックは少ないように見えたので、日曜日の行楽車だったのかもしれない。トンネルを抜け下りになると車は走りだしたが、ほっとしたのも束の間、クールを過ぎたマイエンフェルト辺りで全く動かなくなった。どうやら事故があったらしい。スイスのアウトバーンでの事故遭遇は初めてである。
 ザンクトガレンに近いハイデンというボーデン湖を望む田舎町にスパホテルがある。ネットで調べて雰囲気の好い展望浴室があったので、旅の最後の宿に選んだ。しかし残念なことに天然温泉ではないという。温泉に拘って近くにある温泉館ハイルバート・ウンターレッヒシュタイン(Heilbad Unterrechstein)に行った。ところがこの温泉館、日曜日は6時までだという。渋滞に遭って遅くなり温泉に着いたのが5時40分だった。もう時間がないから駄目だというのを泣き落としで頼み込み、20分だけということで入れてもらった。入ってしまえばこっちのもの。始めは頑固に断っていた係りのおばさんも、浴槽のバブルやジェット噴流のスイッチを入れてくれた。
 ホテルに帰ってホテルのスパのサウナに行った。ハイルバートでは閉館前でサウナに入れなかったからである。ボーデン湖を見下ろしながらデッキチェアに寝そべってハーブティーを喫した。
翌朝はザンクトガレンから高速に乗り、チューリッヒ空港へは1時間ちょっとで着いた。
車を返却し、帰国便にチェックイン、レストランで珈琲を喫し、免税店で土産を買い、機上の人になった。成田に着くのは翌日だから出てから13日間の旅になった。温泉に泊まりながらアルプスを巡り、都合25の古城を訪ねた。少々トラブルもあったがトラベルの語源がトラブルだから仕方ない。気の置けない仲間との楽しい旅だった。

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