国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
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福島の復興活動を労う温泉旅

大洗サンビーチ温泉 <潮騒の湯>

 
昨年は東北大震災や只見川の水害を蒙った福島の温泉を見舞いに赴いたが、一年経って復興活動の労いと激励に再訪した。福島へ向かうには東北道と常磐道の二つのルートがある。今回の旅では常磐道で往って東北道から帰るという反時計回りのルートを採った。往路の立ち寄り湯に大洗の「潮騒の湯」を選んだ。大地震で大きな被害を受け休館していたが、再開していると聞いてお見舞いと激励の気持ちを込めてのことである。常磐道から北関東道に分かれ東水戸道に入って水戸大洗ICで降りる。国道51号を少し走って海岸に出た辺りに日帰り温泉館「潮騒の湯」がある。一帯はサーフィンの適地らしく浜辺にはサーファーの車が並んでいた。
この温泉には以前行ったことがある。太平洋を望む造りの良い庭園岩風呂があって気に入っていたのだが、震災で壊れたそうで単純な長方形の石造りの露天に造り替えられていた。お湯に浸かったまま大洋を望むことはできないが、立ち上がればサーファーが戯れ白波が打ち寄せる海原は見渡せるという絶景は変わっていない。お湯は「太古の化石海水」と称する非火山性の温泉で、効能の大きい高濃度炭酸泉ということだ。
広い展望レストランがあってリーズナブルな価格の地魚料理が美味しい。朝は首都高を抜けるのに時間がかかる。温泉から上がるとお昼になるしお腹も空く。オコゼのから揚げとカンパチかまの塩焼きでランチをした。ランチをしていると大型バスが着いてどこかの議員先生の後援会と思しき大勢の人が入ってきた。昼間からチャイナ服のコンパニオンを呼んでの宴会のようだ。総選挙が迫って来たからなのだろう。温泉も売り上げが増えて結構なことだ。
昼食後はしばらく国道51号を北上し「日立南太田IC」で高速に乗って福島へ向かった。

穴原温泉 <吉川屋>

 現役時代、縁あって福島へは度々出向いた。泊まりがけの出張も多く、その場合は温泉に泊まった。福島市内には温泉地が十数ヵ所あり、温泉宿は選り取り見取りである。そういう中でお客をお連れしたりする場合の泊まりは、もてなし重視でにっこり女将の穴原温泉・吉川屋と決めていた。そのうちに女将のファンになり、女将の顔を見ないと年が越せない気がして、定年後も毎年少なくとも一回は福島へ行く習わしになった。昨年は震災のお見舞いだったが、今年は復興活動への労いである。
 福島のリンゴは青森や信州のものより美味しいと言われている。吉川屋へ行く前に、リンゴ屋へ寄った。親戚や入院中の友人の見舞いに贈るためである。市街地の西の山麓にフルーツラインと称する街道があり、その道沿いには数多くのリンゴ直売店が点在している。その中ににっこり美人が女将をしている行きつけの店がある。昨年は放射線の風評被害で女将の顔に陰りが見えたが、今年はリンゴの出来も良いようで笑顔が甦っていたのでほっとした。
 吉川屋では相変わらずのにっこり女将に迎えられた。女将は震災当日も出張中の旦那に代わって慌てる従業員を指揮して恐怖に慄く客を落ち着かせ、その後は大勢の避難者を受け入れる、また女将会の代表として大臣に復興支援の陳情をしたりの大活躍だったとか。最近でも各地の女将会へ危機管理の講演に出かけるという忙しい身らしい。そうした活躍の効果だろう。福島県へ応援に派遣されている警視庁の定宿になっているし、この日もバス8台を連ねた大きな団体さんが来ていた。どうやら吉川屋に関して言えば復興は叶ったようで安心した。

熱塩温泉 <ふじや>

 福島・穴原温泉に泊まった翌日は会津へ回った。国道13号で山形県・米沢入り、121号で再度福島県・喜多方へ戻った。大峠のトンネルを抜けたところに日中ダムがある。大きなロックフィルダムで、すぐ下のダムを見上げる位置に一軒宿の「日中温泉」がある。「日本秘湯を守る会」の会員名簿に載っていたので立ち寄ってみた。広い駐車場に車がないのでおかしいなとは思ったのだが、案の定温泉旅館は休館中だった。福島県だということの風評被害でこの時期客が来ないのだそうだ。同じ福島県でも大型バスが並ぶ穴原温泉とは大きな違いだ。
 仕方ないので少し下って熱塩温泉へ行ってみた。温泉街の酒屋さんで評判を尋ね、観音風呂が売りの「ふじや」で立ち寄り湯を乞うた。温泉街の一番奥で、源泉小屋のすぐ前にある旅館だ。鮮度の高い温泉が注がれているに違いない。浴室の湯気が濛々と立ち込めている中に等身大の観音様が鎮座していた。観音様の足元からお湯が注がれている。飲泉カップが置いてあったので試飲してみた。熱塩温泉だけあって適度な塩味があり、温泉としては美味しいほうだ。塩泉は湯ざめをしないのが特に寒い時期には好い。
 浴後に喜多方へ出て「喜多方ラーメン」を食した。今では各地に売出し中のご当地ラーメンがあるが、それらの中でも喜多方は古参の方だ。名が出てから久しいが、特別美味しいということでもなくなってしまった。

宮下温泉 <栄光館>

 会津本郷(美里町)は焼き物の町である。良い土があるのだそうだ。そこに今に登り窯を守っている宗像窯という古窯がある。現在の当主は八代目で会津本郷焼の代表的陶工である。またその妹の宗像真弓も感性豊かな女流陶芸家である。本郷焼は本来備前系の陶器なのだが、真弓さんは昨年独立して磁器の工房を創った。昨年は秋に予定されていた三越本店の個展のために造り溜めていた作品が大地震で壊れたりして大変だったようだが、頑張って何とか好評裏に個展を終えることが出来たという。来年また三越本店での個展がきまっているそうだ。
 実は真弓さんの感性が気に入り合わせて彼女が美人なので、彼女が七代目の娘として宗像窯で制作していた時代からファンになっている。祝賀会などの引き出物に指名で作品を依頼したことが何度かある。今回喜多方でラーメンを食した後、本郷にある彼女の工房を訪ね、近く結婚なさる知人へのお祝いの品の制作を依頼した。
 この美人陶芸家の愛称は「まゆ姫」である。まゆ姫の友達に「京子ちゃん」という美人が居て、奥会津の宮下温泉・栄光館で女将をやっている。栄光館にはまゆ姫の紹介で何度か泊まったことがある。まゆ姫の工房からは3〜40分である。今回ももちろん泊まりに行った。夕食にはまゆ姫にも来てもらって京子ちゃんを交えて会食をした。
 栄光館は昨年夏の豪雨による只見川の大洪水で一階が屋根まで水に浸かり、半年ばかり休業していたのだが、今年の春には建物の修復もなって営業を再開した。女将の笑顔もすっかり甦っている。温泉は昔通りかけ流しである。寒い時期だから浴室には湯気が立ち込めているが、曇った窓を通して只見川の流れが見える。朝食後にも一風呂浴び、暖まってから京子ちゃんの笑顔に別れを告げた。

塩原温泉 <東や>

 奥会津の宮下温泉からの帰路、国道400号で南会津へ出て山王峠、尾頭峠をトンネルで抜け塩原温泉郷に入った。中塩原の辺りは400号の南側にバイパスが出来ていて温泉街を通らなくて済む。走っていると、ネットを見ていて良い露天風呂があると記憶に残っていた「東や」という旅館の看板が目に入り車を止めた。
 件の露天風呂は宿の裏山を少し登った所にあった。期待した通りなかなか造りの良い風情のある露天風呂だった。二段になった岩組の湯舟があって大きな岩の上から透明のお湯が掛け流され、黄金色に色づいたもみじの葉が湯船に浮かんでいた。お湯も適温で旅の仕上げの湯としては申し分ない。
 宿の主人に勧められ、旧道の温泉街にあるそば処「是庵・たみ吉」で二八蕎麦のランチをした。後は那須塩原ICから高速に乗り一路家路についた。

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