国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
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第74回   信泉会  (2013/spring)

     八ヶ岳・蓼科高原の新緑を巡る





音無の湯に集合
 諏訪・蓼科地区は信州の入り口に当たるため、集合場所にはよく使うが泊まりは意外と少ない。今回は久々に奥蓼科温泉郷の「渋御殿湯」を泊まりに選んだ。前回の集合が「河童の湯」だったので、今回は更に白樺湖の方に登った「音無の湯」にした。「音無の湯」は開業した当時は温泉ではなくて真水を沸かした単なる風呂だった。だから温泉に拘る「信泉会」としては敬遠していたのだが、最近になって温泉の掘削に成功したということで、今回集合場所と決めたのだ。
 渓流沿いにある造りの良い露天は、温泉でなかった時代と見た目は変わってはいない。温泉も弱アルカリ性単純泉ということで透明の湯だから雰囲気も以前のままである。11時オープンとなっていたが、10時過ぎに一番に着いた仲間は、頼んだら入れてくれたという。後続が着いた頃にはすでにゆで上がっていた。
 白樺湖畔まで登り恒例の蕎麦ランチをした。その後ビーナスラインですずらん峠を越えて北横岳に架かる「北八ヶ岳ロープウエイ」に乗った。昔は「日本ピラタス」と呼ばれていたが名前が変わったらしい。ピラタスとはスイスの観光地ルツェルンの郊外にある山で、アルプスの展望が素晴らしい。だから諏訪がルツェルンだとすれば日本アルプスの展望が素晴らしい北横岳をピラタスに見立ててのネーミングだったのだろう。しかしスイスのピラタスが日本の観光ツアーに組み込まれることはなく、したがって日本人に馴染が薄かったからなのだろうか。いつの間にか「北八ヶ岳」に変更されてしまったようだ。 
 ロープウエイの山頂駅は北横岳(2,472m)と縞枯山(2,399m)の鞍部にあり、そこには「坪庭」と呼ばれる散策コースがある。この日は良く晴れていたのだが、春霞で北アルプスは見えなかった。

渋御殿湯

 ロープウエイを降りて蓼科の温泉街で珈琲ブレイクをした後宿に向かった。宿は奥蓼科温泉郷の最奥にある「渋御殿湯」である。奥蓼科温泉郷で「渋」と付く温泉に「渋・辰野館」がある。信泉会では第54回(2003spring)で泊まった。辰野館の前を通り越してさらに奥へと登ると、行き止まりに渋御殿湯があった。渓流に沿って東西に長く伸びた建物で、その東西の端それぞれに浴室がある。標高1880米という高所にある温泉なので、2ヵ所の温泉を一度に梯子しようとすると、息が切れるくらい長く廊下を歩かねばならない。
 温泉としての格調が高いのは「東の湯」で、檜造りの浴室の中に半畳ほどの大きさの26℃の「渋御殿湯」、それよりやや大きい31℃の「長寿の湯」、それにさらに大きい沸かし湯がある。「渋御殿湯」という宿の名前になっている浴槽は冷たくて浸かるのにかなりの勇気が要るが、「長寿の湯」の方は息を詰めればなんとか浸かることができる。浴槽の底から湧き出る硫黄泉系の源泉なので、効能は高そうな気がする。久々に純正の秘湯に浸かった気がした。

星空の湯

 翌朝は国道最高地点だという麦草峠(2,130m)を越えた。この峠道・国道299号は落葉松の新緑が美しい。「八峰の湯」という温泉館に立ち寄るつもりで、下る途中で国道から分かれて松原湖へ向かった。あまり通ったことない道だったので、スキー場やゴルフ場ができているのを知らなかった。そればかりか「小海リゾートシティー・リエックス」という洒落た施設があり、その中に「星空の湯」という温泉館があった。まだ10時前だったが、朝は6時から営業していると書いてあったので迷わずそこで立ち寄り湯をすることにした。
 「松原湖温泉カラマツの湯」という源泉から引湯しているという透明の炭酸水素塩泉だ。
お湯はともかく露天の展望が素晴らしい。白樺の美林が周りを取り巻き、その間から遠くに浅間山を望み、眼下にゴルフ場を睥睨するという抜群の立地である。思わぬ拾いものをした感じだった。
 千曲川の源流、川上村へ行きランチに「川上そば」を食した。歯ごたえのあるいわゆる田舎蕎麦で、信州そばの原点のような気がして好感が持てる。信州峠を越えて甲州・須玉へ出た。信泉会ではこれまで信州への出入りに色々な峠を越えたが、この信州峠は初めてである。立派な道路になっている。大阪まで帰る車もある。須玉で珈琲ブレイクをしてから解散した。

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