国際温泉評論家 山本正隆のココシカ温泉談義
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第75回 信泉会 信州秋色を巡る   2013/fall

 <信州美麻温泉・もくじき荘>

蓼科・石遊の湯に集合

 前々回の「河童の湯」、前回の「音無の湯」に続いて今回も蓼科地区の「石遊の湯」を集合場所に選んだ。蓼科では麦草峠を越えて佐久に抜ける国道299号を「メルヘン街道」と呼んでいる。そのメルヘン街道の茅野側の登り口近く、脇道に少し入ったところのカラマツ林の中に立ち寄り温泉「石遊の湯」がある。朝9時からやっているのでドライブの前の潔斎に好い。「鋼管鉱業蓼科温泉」というらしい。戦時中に鉄鉱石を掘っていた跡だそうで、高温の湯が湧出しているという。石遊(いしやす)は鉱床の名称だったそうだ。
  「石遊の湯」は信泉会では以前帰りに立ち寄ったことがあった(第42回)。当時は屋根つきの露天風呂だけの温泉だったが、今度行ってみるともう一つ開放的な露天の岩風呂ができていた。例年にない遅い台風の接近で、朝家を出るとき大雨が降っていたのだが、温泉に着いた頃には天候も霧雨程度に回復し、露天に浸かるのになんら支障はなかった。温泉は場所柄としては不相応と思える高い塀に囲まれてはいるが、それでも周りの林は程よい秋色をしていた。

 5台の車が揃ったところでビーナスラインのすずらん峠を越え、女神湖を経由して海野宿へ下った。峠越えの道は美しい紅葉に彩られているはずだったが、その片鱗は感じられたものの、ただひたすら立ち込めた霧の中を走ることになった。





 
 
 参照

室賀温泉・ささらの湯

 海野宿は信泉会の初期(第7回・1978)に通ったことがあった。当時は単に宿場の面影を残した寂れた旧街道(北国街道)で、木曽・中山道の馬籠宿や妻籠宿のように観光地として認識されていたわけではなかった。しかし今回久々に行ってみると街道の中央を流れる用水路もきれいに整備され、卯建が上がったり格子戸のはまった家並みが整然と並んでいる(約600米)。その後「重要伝統的建造物群保存地区」に指定され(1987年)たからなのだろう。南の入り口に大きな駐車場も整備され、観光客もそれなりに街道を歩いているが、土産物屋などがほとんど目につかないのが本当の旧街道らしくて良い。
 蕎麦屋も二軒しか目につかなかった。そのうちの一軒「かじや」の二階に上がって蕎麦ランチをした。素朴な田舎蕎麦で美味しかった。
 海野宿を後にして上田に出て、千曲川を左岸に渡って室賀峠に向い、途中にある「ささらの湯」に立ち寄った。会としては初めての温泉である。玄関が三ヵ所もある大きな施設で、空いている駐車スペースに適当に車を駐めて入ったら、浴室へはエレヴェータと長い渡り廊下で行かねばならなかった。月替わりで男女が入れ替わるらしいが、室内の大浴槽と外に二つの露天岩風呂があった。大型施設だし、土曜日ということもあってか、結構混みあっていた。「女性に人気・三美の湯(美肌・美人・美粧水)」と謳っているアルカリ性(pH9.4)の単純硫黄泉で、近くの地下1500米から50℃の湯が湧いているという。循環はしているらしいが、塩素は使っていないのだそうだ。また源泉は飲用可というのも評価できる。

信州美麻温泉・もくじき荘

 「ささらの湯」から細い山道の峠を越えて麻績を経由し、差切峡を下って犀川岸にでた。国道19号を長野方面に少しだけ下って大岡で左岸に渡り、大町に抜ける県道394号の急坂を登ってこの日の泊り「もくじき荘」に着いた。信泉会では以前春の例会で「もくじき荘」には泊まったことがある(66回)。しかしその時は何故か参加者が少なかった。それでもなかなか良い温泉だったので、今回秋の例会に選んだのである。信州美麻温泉と言うのは所在地が近年大町市に合併される以前は美麻村だったからである。「もくじき荘」は近くのお堂にあった「木喰像」に因んだ名前だそうが、残念なことにその像は数年前に何者かに盗まれたという。世の中には悪い奴がいる。
「もくじき荘」は檜風呂の浴槽も良いが、露天風呂の造りも良い。大きな岩を配した浴槽もよくできているし、自然の山を背景にした庭もよく手入れされている。湯は「炭酸水素塩泉」で加熱・循環という長野県温泉協会の認定書が標示されている。細かい成分表などの標示はないが透明で気持の良い湯が湯船を満たしていた。泉源から20℃の湯を300m程引いてきて加熱しているという。露天の裏山は良い秋色をしていて再訪したのは正解だったと思った。
宴会の締めは恒例の信州国歌「信濃の国」の斉唱だった。いつものことだが、これを唄うと宿の人にも評価されるので気持ちが良い。
 
 
 参照

霊松寺・葛温泉

大町の東側の山中にある曹洞宗の古刹・霊松寺は紅葉の名所として知られている。もくじき荘から大町へ出る途中を山中に入った所なので寄ってみた。丁度紅葉の見ごろだったので観光客が多く、駐車場ではガードマンが交通整理をしていた。またこの時期には観光ボランティアがお寺の内部をガイドツアーしてくれる。奥には武者隠しなどもある大きな伽藍だ。庭の満天星つつじが真っ赤に染まっていた。
大町に下りてから西に向い高瀬川の秋を探訪した。先ず龍神湖(大町ダム)の展望台から緑色パステルカラーの湖水と赤・黄・緑に彩られた谷の斜面を愛でた。上流の葛温泉へ向かう道路脇の秋色もすばらしい。信泉会では30年前に葛温泉の仙人閣に泊まったことがあり、その後も一度同じ仙人閣で立ち寄り湯をしたことがある。今回は高瀬川の右岸にあり紅葉の林の中にある露天に浸かろうと「温宿・かじか」に立ち寄った。
先ず入浴前に周りの紅葉が映えて明るくなっている食堂で蕎麦を食した。温泉は高野槇の浴槽のある内湯もよいが、周りを紅葉の林に囲まれた屋根つき露天の雰囲気はすばらしい。日曜日とあって立ち寄り客は多い。温泉から上がった頃には蕎麦も売り切れたようだ。温泉を食後にしてよかった。
入浴後は安曇野で行きつけのリンゴ農園に立ち寄り、信濃ゴールドなど旬の銘柄で格安物を買った。安曇野ICから高速に乗って解散した。観光シーズン、日曜午後の中央道の登りは渋滞で時間が掛かる。しかし温泉も紅葉も良かったので仕方ないだろう。

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